「安楽椅子探偵アーチー」 松尾由美 感想 ネタバレ
- 22 1月, 2014
SFミステリー小説は数多くありますが、”椅子”が探偵になるとは驚きです。しかしこの作品はただ単に事件解決や謎解きだけする作品ではありません。椅子が意識を持つようになった二番目の持ち主を探すというテーマがあるのです。
誕生日プレゼントでアンティークの椅子を買ってしまう
小学生の及川衛(おいかわまもる)は、誕生日プレゼント代としてもらったお金を持って欲しかったゲーム機を買いに行く途中、誰も居ないはずの場所で”あくび声”を聞いてしまいます。導かれるようにして入った骨董品店で、椅子がしゃべることに気が付き、これを購入してしまうのです。後にワトソン役となる彼が、椅子の声を聞いてしまうという運命のいたずら。。。彼の人生を大きく変えたことでしょう。衛の同級生によって”アームチェア”の”ア”と”チ”をとって「アーチー」と名づけられる探偵の登場になります。
次々の不可思議な事件や謎を解いていく椅子(アーチー)
衛の小学校や父親などが遭遇する事件?を次々と解決(というか解明)していきます。殺人などの重大な犯罪ではなく、世間や身の回りに起きた不可解なことを見事に見抜いていきます(当然動けないので解決はしませんw)。血なまぐさい作品に辟易している人にとって、ライトミステリーを楽しむには充分な内容になっていると思います。
ついに椅子(アーチー)の待ち人来る!
アーチーの生まれは世界大戦期の魔都上海で、2番目の持ち主である日本人の若者と一緒のときに意識を持つようになりました。椅子が声を発したことで彼が驚いてしまい、帰国の後に引き取りに来なかったことで、アーチーは何十年もずっと気にかけてきたのです。とあるキッカケで彼と思われる人物を探し当て、ようやく心の荷物を降ろすことが出来き、めでたく物語りは終わりを迎えます。。のび太くんがおばあちゃんに会いに行ったときのような感じですね。ちがうか。
設定は面白かったが、作品としては品質悪すぎ
小学生と椅子、という組み合わせは面白かったのですが、文章そのものが雰囲気を壊します。誰の視点で描かれているのかがサッパリ分かりません。衛の視点であればもうすこし砕けた文章にしないとね。文学に傾倒して語りたがる大学生じゃあるまいし、こまっしゃくれた表現ばかり使って、いったい誰だよ!?って感じです。あと、元々の持ち主に会えたことはいいのですが、展開自体がお粗末。謎の組織だの離縁した奥さんといきなり遭遇するなど、強引に纏めようとして非常に雑な作りになってしまいました。編集の都合だったのでしょうか。とても残念です。
今回は内容的に不満足という感想でしたが、面白いテーマで描く作者なので、別の作品に期待したいと思います。