「デパートへ行こう!」 真保裕一 感想 ネタバレ

  • 6 4月, 2014

「外交官黒田康」シリーズや「ホワイトアウト」などでお馴染みの真保裕一作品です。今回はハードボイルドなものではなく、深夜の老舗デパートで起きた様々な奇跡?を描いたものです。様々な境遇の登場人物たちは一体なぜ深夜のデパートに忍び込んだのか。その結末とは?

日本人という以外共通点の無い登場人物たち

主なキャラは以下の通りです。(登場順)
  • 加治川英人 ・・・ 離婚した妻や娘とは離れ離れ。仕事も無くなって追い詰められたとき、よく亡き母に連れて行ってもらった鈴膳デパートに忍び込む。
  • 山添真穂 ・・・ 鈴膳デパートの女性店員。とある計画を抱き、退社後に舞い戻ってデパートに忍び込む。
  • コーちゃんとユカ ・・・共に学生で、一緒に家出したがお金も底を尽きる。行く当ても無くなってしまい、鈴膳デパートで食べ物と寝床をもとめてやってくる。
  • 佐々岡祐也 ・・・ 鈴膳デパート社員で。外面がよいが腹黒い男。遺失物として渡された品をみて真穂の企みに感づく。
  • 塚原仁士 ・・・ ヤクザと警察に追われている裏家業の男。傷を負って逃げ惑う途中、鈴膳デパートに逃げ込む。
  • 矢野純太郎 ・・・ 鈴膳デパートの社長。創業家の人間で、自分の力量の無さにから、祖父の代から続くデパートの存続危機を招き、どう立ち向かえばよいか迷っている。
  • 半田良作 ・・・ 生き字引といわれる70の老人警備員。戦争中にデパートでかくまわれたことがキッカケで生涯現場の警備員を勤めようとしている。
  • 赤羽信 ・・・ 警備員で、元鈴膳デパートの社員。販売員時代にあった出来事で十字架を背負って生きている。
はっきり言ってバラバラ。一体彼らはなぜ鈴膳デパートに来たのか、彼らがどのように結びついていくのかは徐々に描かれていきます。全員で揃うまでは個別の背景を把握するだけで特に目立ったことはなく、一気に読み進めてしまうと良いでしょう。物語は中盤から後半に面白くなっていきますからw

ヤクザに追われる塚原、逃避行?のコーちゃんユカちゃんが転がり込む

タイトルの「デパートへ行こう!」なんて明るい雰囲気は全く無く、どちらかといえば何か人には言えないものを抱えて逃げ込む?「デパートに駆け込もう!」がピッタリな感じもします。夜にやって来る時点で後ろめたい人ばかりです。細かいところで登場人物たちがニアミスしてくところはちょっとドキドキして面白いです。

デパートを思う半田と矢野、思い出に浸る無職加治と決意を持った真帆など

鈴膳百貨店を思う気持ちは人様々です。建物や場所、そこに居る人たちなどに思い入れを持つってどんな気持ちか分かります。大切なところっていつまでも変わらないでいて欲しいと、年を重ねるごとに強くなっていくんですよね。半田と矢野、加治にとってかけがえの無い場所なのです。しかし真帆は。。。彼女にとって辛い場所でしかなく、自主的に”退職金”を頂くというのも、きっと彼女にとって本意ではないのでしょうから、ずいぶんと追い込まれているのでしょう。佐々岡?ほっとけあんなヤツ!

事件の真相が明らかになる

ライバル百貨店からの買収話や地方店舗店員の贈収賄事件など、鈴膳百貨店に降りかかる危機はその一つ一つが繋がっていることが明らかになります。この辺りから徐々に登場人物たちのバックボーンが重なっていくんです。まぁちょっと都合が良すぎる気がしますが、エンタメ作品で躊躇してたら何も出来ませんからね。個別に進行していた物語が繋がっていくところこそ、こういう作品の醍醐味なんですね。好きです結構。

終わりよければ全て良し!でも欲を言えば・・・

夜中のデパートという設定はそれなりに興味を引くシチュエーションでしたが、やっぱり営業中だった方が楽しかったんじゃないでしょうか。三谷幸喜監督の『THE 有頂天ホテル』のように、普段の営業の中でいかにトラブルを乗り越えていくかが読みたかったです。欲を言えばね。

ドタバタ劇も最後はやっぱり感動の大円団ですっきりと終わります。加治や真帆、半田に矢野社長がどのような結末を迎えるか。言ってしまいたいですが、ここはぐっとこらえてw 是非読んでみてください。半田のところで目頭が熱くなりました。

この作品で真保裕一の新しい一面を見れて良かったです。


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