「東京ダンジョン」 福田和代 感想 ネタバレ

  • 5 4月, 2014


地下鉄、全線緊急停止!”物騒なキャッチとダンジョンという響きが気に入り手にとって見ました。ジャケットとタイトルや帯って大事だなとつくづく思う。東京の地下鉄など地中に存在する空間を”ダンジョン”と呼ぶ発想は無かったから、それだけで興味が湧くってもんです。

地下鉄の保線員である主人公

本作の主人公は的場哲也。東都メトロ銀座線の工務区に勤務し、保線作業を担当している。日々トンネルの中を歩き、線路などに異常がないか点検している。あの長い長い線路を人手で、しかも徒歩で検査していることを、電車の利用者はまったく気にしたことないと思う。まさに縁の下の力持ち。決して華々しくはないけど、とても大切な仕事なんだろうな。


地底人のうわさと近頃様子がおかしい弟

保線作業の中、新橋駅近くでいるはずのない人影に気づいた的場たちは、行方を捜すが見つからなかった。家庭では弟が仕事を止めた後、職につけずにいた。近頃よく外出するようになったことで母親が不審に思い、的場に相談するところから物語は徐々にスピードを上げていきます。弟が参加しているという鬼頭征夫という評論家の講演会にまでたどり着いた的場は、先の新橋駅近くで見かけた男と、朝宮という大変人当たりの良い学生に出会うのだが。。。。


物語に意外性はないが期待は裏切らない!

勉強会に参加した後、的場の弟が暴行に遭い重症を負うところからは、ほぼ予想通りの展開。日本らしく派手なドンパチはなく、悪役は誰かいただろうか?というほどすっきりと終わります。作品の中で社会の不都合や不条理を糾弾し、誰かが立ち上がらなければならないことを強く主張する場面が数多くあります。地下鉄テロ発生という異常事態の中で、この世を変えるべくアクションを起こした(起こしてしまった)若者たちと、地に足をつけ自分の出来ること、与えられた役割をしっかりと全うしていく大人の姿が描かれます。読み手の人によって、どちらに自分を重ねるかはわかりませんが。自分はしっかりと信念をもって生きているだろうかと自問してみたくなる、そんな作品でした。


単にエンタメ作品として終わらないところが良かったです

テロ発生、鎮圧、あー良かった。。。だとしたら評価は低かったですが。しっかりと芯の通った作品だったと思います。鬼頭と朝宮が訴えたことは、既にありきたりな議論になっていますが、沢山議論されるからこそありきたりになっているのでしょう。それだけ身近で大きな問題なのだと思う。

作中にとても気に入ったところがありました。一般人である的場が爆弾捜索を決意した理由でした。

「自分には火災を消し止めることはできない。道路にアスファルトを敷きつめることも、家を建てることも、電気工事すらできない。できるのは地下鉄の保線だけだ。その地下鉄が、いま危機に瀕している。会社のためにやるわけじゃない。それが自分の仕事だからだ。自分にも、ひとつだけ誰よりも上手くできることがある。だからやるのだ。

一仕事人として、自分の仕事に誇りをもつことが出来るなんて、とても幸せなことです。いつか自分もひとつだけ誰よりも上手くできることを見つけたいなぁ。


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