「パンドラ・アイランド」 大沢在昌 感想 ネタバレ

  • 20 3月, 2015

大沢在昌(おおさわ ありまさ)さんのハードボイルド小説です。発刊されたときから暫くたってますが、ハードカバーを頂くことになり読んでみました。南に架空の島があり、元刑事が保安官として着任してから次々と殺人が起こっていき、少しずつ島の秘密が明らかになっていき・・・・、というストーリーです。あれ?半分くらいネタバレかなこれ。思ったよりも読み進めやすく、筆者の作品に初めて触れる読者にとっては、大変バランスが良くて楽しむことができました。

ヨソ者に冷たい村民とそれでも島にやってくる人たち

主人公の高須は元警視庁捜査一課に勤務経験のある警察官です。死亡した島の保安官の後釜として、短期で臨時の保安官として着任するところから始まります。離島に元警察官に保安官だと?これだけできな臭いニオイがプンプンするってもんです。そして”島の財産”について話す酔っ払い爺、作品のヒロインとして妖しい雰囲気の女性。村役場の人間まで滞りなく登場していくのですが、導入部はとても円滑な流れで、少しずつ今後に期待を持たせる感じでストレスなく読むことができました。ある程度の長さを持つ作品で、この部分をしっかりと書き込んであるのはさすがですね。離島というと直ぐ『Dr.コトー診療所』を思い起こす私にとってはとても新鮮です。

焼かれた看板、不審な点を持つ老人の死などが実は一つの線につながっている

一見つながりのない一つ一つの事件が、『島の財産』という器の上で繋がっていくのですが、徐々に内容はハードになっていきます。本庁から到着した捜査一課や、”裏”を持った村民たち、そして見えない殺人者、、想像力に乏しい私にとってめぐるましく展開してく事件は大変興味をそそられるつながり方でしたよ。ハードボイルド系、警察系の小説ってこういったテンポの良さが命だなと、改めて実感してます。

ついに正体が明らかになる殺人犯に高須がとった行動とは

殺人犯の正体がわかるにつれ、徐々にそのバックボーンの不気味さと凶悪さが引き立ってくるわけですが、高須はその時々でできる限りの手を尽くして犯人確保へと突き進んでいくのです。下手な打ち合いも格闘もありませんが、等身大の人間の行動とはそんなもんですよね。そして高須自身が持つ責任感と意志の強さによって、最悪の事態を迎えることなく事件は解決へと向かうのです。ハードな内容でもすっきりと終わらせるあたり、感服いたしました。もう一度最後の部分読み返してもいいかな。

過去作品をあさってみよう!

私にとって、読了時のすっきり感はなくてはならない大切な要素です。読んでよかったと思わせてくれる作品に出会うことが、読書家にとって一番の喜びですよね。今回は及第点だったと思います。大変有名な作家さんですし、作品もあるので、もう少し読み進めて、本格的なファンになるか決めようかと思います。どうもありがとうございました。


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