「悪の経典」 貴志祐介 感想
- 23 5月, 2013
<『悪の経典(上・下)』 貴志祐介>
ふと本屋に立ち寄った際、この作品の映画について、プロモーション映像が流れていました。生徒役の若い役者さん達の演技からは、物語の猟奇性や残虐性や恐怖感がちっとも伝わってきませんでしたが、どんな作品なのか気になってしまいました。
読み進んでいくと何のことは無く、何事にも積極的で人気のある蓮実聖司という高校教師が、日常生活や学校で起こる様々な揉め事や課題の解決に取り組んでいました。
ですが話が進むうちに、文脈に何かしらの違和感を感じ始めました。何でこんな表現を使うのだろう?この感覚は何だろうか?と気にしながらも物語を追っていくと、徐々に蓮実の言動に恐怖を感じるようになり、それまでの奇妙な感覚が何によって生み出されたのかを理解しました。
この文章の読ませ方と繋がり方は、本当に書き方がうまいもんだなぁと素人ながら感心してしまいました。この時点でもうこの作者さんのファンになってしたねw
人のいい万人受けするようなやつに限って、裏で何を考えているか分かりません。騙され、追い詰められていく生徒たちを思うと気の毒でならないですね。生徒が次々と。。。という点では映画にもなった「バトル・ロワイアル」もありますが、これとはちょっと違った感覚で読めると思います。
貴志祐介さんはサスペンスやミステリー物も出しており、まだまだこの巧みな文章を味わうことが出来ますので、他の作品も早いうちに読んでみようと思います。