「真昼のプリニウス」 池澤夏樹 感想
- 8 7月, 2013
<『真昼のプリニウス』 池澤夏樹>
”プリニウス”とは古代ローマ帝国の時代の学者で、ヴェスヴィアス山の噴火で無くなった方だそうです。いったいこのタイトルは何を意味するのだろうか?
池澤夏樹は旅人です。この単語がこれほどに合う人も珍しいと思います。イモトアヤコとは違う旅を楽しむ旅人です。
国内外の様々な国、地域で色々な人や文化と出会いつつ、それを受け入れ、感じ取り、自分の中で面白く消化していくことができるのは本当に羨ましいことです。私もアジア、オセアニア、ヨーロッパと足を伸ばしたことがありますが、私にとってそれは非日常的な旅行であって旅ではありませんでした。(違いは説明できません。そう感じるだけです)作者と同じような行程を同じように旅をトレースしても、同じような感じ方など出来ないでしょう。池澤夏樹ゆえの感想、反応なのですから。
やはりエッセイこそ彼の真骨頂というくらい機知に富んだ内容です。詐欺にあった(かもしれない)ことすらネタになってしまうなど、図抜けたところは尊敬に値しますよ。全て読んでみると飛行機やその周辺にまつわるエピソードが多く、内容も詳細な感じです。飛行モノが多いといえば映画監督の宮崎駿も飛行機(飛ぶこと?)が好きですよね。殆どの作品に空を翔るシーンがありますから。両者はきっと気が合うに違いありません。対談とかしないのかな。。。
家と職場を往復するだけの毎日を過ごしている自分には、こういったエピソードにめぐり合うことは無いと思いますが、作品を通じて池澤夏樹の目や脳を通して、世界の面白さや難しさといったものに触れられたような気がします。人は自分が直に見たもの知りえたものの範囲を超えて、物事を正確に知覚できないと聞いたことがあります。それでも脳みその勘違いだとしても旅人の気持ちを味わいたいものです。