「とんび」 重松清 感想

  • 23 7月, 2013

<『とんび重松清

流星ワゴン」に続き、またしても重松清の”父と子”に感動してしまいました。昭和から平成へと流れていく時代の中で、たった一人のわが子を愛し、慈しみ、不器用でも、不恰好でも、ただひたすら家族、息子の幸せを望む父親の姿に、涙をこらえることが大変でした。内野聖陽佐藤健でドラマ化された名作です。


昭和の中期ごろ、”ヤスさん”は妻の美佐子さんとの間に男の子が生まれることになり、これでもかと幸せ一杯なところから物語は始まります。アキラと名づけられた子供と妻とで、市川家はつつましくも幸せな未来が待っているはずだったのですが。。。。

二人っきりになってしまった家族ですが、アキラが成長していく過程で様々な出来事が父子に訪れます。しかしヤスさんはアキラが居ることだけで悲しみや苦しみを超える大きな幸せを感じるようになります。やがてアキラが家族を持ち、父親となっていき、立派に成長した息子と、屈託のない笑顔の孫に囲まれたヤスさんは、決して全てが望んだことばかりではないが、これまでの人生を最高のものだったと振り返ることが出来たのです。

主人公のヤスさんはまさに流星ワゴンの”チュウ”さんと一緒ですね♪ 粗忽で不器用で素直になれず、息子への溢れんばかりの愛情をうまく伝えられない人です。昭和の親父ってこういうイメージがあります。昭和から平成にかけて青春時代を過ごした人にとって、ヤスさんやチュウさんの中に、どこか自分の父親に似たところを見つけてしまいますよね。すぐに怒るし、話は通じないし、言い争いになると決まって「親に向かって~」となります。私も子供のときは時に理不尽で融通の聞かない父親に心底ウンザリしたもんです。

周りに素晴らしい大人たちに囲まれていたこともあり、アキラは素直で優しく思いやりのある男に成長しました。母親が居なくても寂しくなかったというのは決して嘘ではなく、ヤスさんの愛情がきちんと届いていた証拠です。伝わりづらくてもアキラはしっかりと受け止めていたのですね。

ヤスさんの素晴らしいところは、ただ「幸せになってほしい」と願っていたところです。「ああなって欲しい」「こうやって欲しい」といった親のエゴを押し付けず(色々と迷いはしていましたがw)、一心にブレることなく幸福を願ったところは、同じ父親として目標にしたいと思います。

私も若いときは、時に口やかましい親を疎ましく思い、人目を気にしすぎて、意味も無く親の姿をみっともないと思ってしまったことがあります。多感な青春時代というのでしょうか。今はその時の自分を恥ずかしく思います。まるで『北の国から』の純君そのものですね。最終回の純君の最後の一言が今でも心に残っています。私も家を出て家族を持ってみて、ようやくこれまで親がしてくれたことに深く感謝の気持ちを持てるようになりました。

長々と駄文を書いてしまいましたが、重松清さんの描く家族愛は鉄板ですね! 「とんび」と「流星ワゴン」は知人にも勧めてみます。まさに今父親になろうという人に読んでほしい作品の一つです!全ての人が同じようには感じれないと思いますが、素直に親への感謝の気持ちが持てることは、大人になった人にとって、とっても幸せなことではないでしょうか。


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