「ザ・ロード/The Road」 コーマック・マッカーシー 感想 ネタバレ

  • 6 8月, 2013


現代アメリカ文学の巨匠コーマック・マッカーシーの代表作で、ピュリッツァー賞に輝いた長編小説です。なぜ読むことになったかというと、ちょうどPS3のゲームで「The Last of Us(ラスト・オブ・アス)」が人気となっていたので、世界が終わった系の小説が読みたくなったからなのです。最近小説に限らずこういうテーマの作品が多いと思いませんか?



物語の舞台はアメリカでしょうか。核戦争なのか、巨大隕石の衝突なのか、火山の大噴火なのか、原因は明らかにされていません。世界は荒廃していてどのくらい人類が生き残っているか、全く分からないという状況で父子がひたすら”南”への道を辿っていくストーリーです。二人の名前も出てこず、読者にも僅かな情報しか与えられないという徹底ぶりで、生きることしか出来ないという極限に近い状況を大変上手に表現していると思いました。和書だけがそうなのかもしれませんが、二人の会話も”カッコ”がなく、文章そのものもうまく技巧をこらしているのではないでしょうか。

「世界は本当に終わってしまったのか?」「南に行けば寒さを凌いで、生き長らえることができるのか?」、最後まで答えは出ないまま長く苦しい旅路の果てに父は死に、息子は当ての無い旅を続けていくのです。作中には下手なアクションもなく、無理やりな心動かされる逸話もなく、ただただ二人が歩む姿を追っていくところが大変気に入りました。アメリカの作品という先入観で読んでいましたが、映画などでありがちなご都合主義なエンタメ要素も陳腐なパターンもなく、読者や出版社に媚びることなく物語の質をしっかりと保って作り上げたところは、さすが巨匠といわれるだけあるなと生意気にも関心してしまいました。

極限状態に陥った人間がとる行動とは、かくも残忍で獰猛で獣じみているのでしょうか。力の無い子供や赤子、女性に対して、実際に食指を動かす場面はありませんが、その行為の結果だけを読者に突きつけます。これが”きっと”現実だといわんばかりの強烈なシーンには、おぞましさを感じます。人間の本性を恐れずにはいられないですね。

今私たちが生きているこの世界は、一歩間違えばこの物語と同じような状況に陥るリスクを常に抱えているように思います。ただシンプルに、そばにいる家族だけが生きるための理由、目的になる。そんな家族の深い愛情を感じずには居られませんでした。少年は父と死に別れ、支えを失って、それでも当ての無い道(ロード)を進んでいく。彼の行く末に幸せが存在していることを心から願うばかりです。

コーマック・マッカーシー。。。恐るべし!!


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